いつでもどこにでも持ち運び、今、この瞬間の出来事や想いを記録したり伝えることができれば…。
そして、それが本当に快適にできるのは、スマートフォンではないし、パソコンでもない。NECのアクティブコミュニケーター「LifeTouch NOTE」は、そんなニーズにピタリと照準を合わせ、満を持して登場した新しいタイプのモバイル端末だ。
その開発に携わったメンバーに話を聞いてきた。集まったのは花岡 平(NECパーソナルソリューション事業開発本部 企画全般担当)、柴山友則(同)、下井秀之(ソフトウェア担当)、菅原 暁(NECデザイン&プロモーション デザイン事業本部 製品デザイン担当) の4名だ。
―今までになかった製品ですね。この製品が生まれた経緯について教えてください。
花岡昨日、今日降ってわいたような企画ではなく、2009年の年末に企画を開始しています。そして、年が明け、2010年の4月くらいにようやくコンセプトが固まりました。実は、最初の半年はコンセプトを考えるだけで時間が過ぎてしまいました。というのも、上司の年代の想いと我々比較的若年層の想いが、微妙に違っていたんです。
かつて、NECにはモバイルギアという端末があったのはご存じですよね。上司の年代は、そのイメージがとても強く、その生まれ変わりを作りたいという気持ちが強かったようです。でも、われわれ若年層にはその感覚はありませんでした。だから、自分のライフスタイルから入って商品にしたかったのです。でも、結果として、いろいろ考えてやってみたら、上司がイメージしていたものと同じものができたという感じかな。
―企画に際してどういう使い方を想定されたのでしょうか。
花岡個人的なところでは、日常的にmixiとかやっているんですよ。最初はPCでやっていたんですが、そのうちにモバイルmixiができて、携帯電話でもできるようになりました。そのうち、自分がスマートフォンを使い始めると、携帯電話と比べて異次元ともいえる使いやすさのレベルなんだと実感できました。
早い話が、すごく読みやすくなりました。移動中に人の書いた文章を読むのが圧倒的にラクになったんです。そうなると逆にストレスもたまるんです。つまり、読めるのだけど書けないというジレンマです。私はフリック入力も下手ですし、まして、携帯電話のテンキー入力は初心者以下といったところでしょうか。だから移動中に書き込むのをとても億劫に感じます。かといって、家に帰ってからPC に向かって改めて、なんてことをいっていると、書きたかったことを忘れてしまうじゃないですか。だから、外にいるときに、気軽に文字を打てる道具が欲しかったんです。
―通信機能つきのキーボードというイメージでしょうか。
花岡今後も、文字ベースのコミュニケ-ションはずっと続いていくと思いますが、そのためにも、文字を効率的に入力できるデバイスが必要です。こうして形になったのが、今回の製品、つまり、キーボードつきのクラムシェル端末です。
キーボードはハードウェアじゃなければダメという方針は最初に固まりました。もちろん、タブレットなら画面も大きくなるし、ソフトキーボードもある程度使いやすくなるかもとは考えたのですが、やはり快適に入力するためにはハードウェアキーボードは必須だろうという判断です。
柴山私は、コンセプトの固まったあとにメンバーとして参加したんです。つまり途中からですね。だから最初はAndroid端末にキーボードがいるのかという疑問もありました。でも、まずは体験と、実際にスマートフォンを使い始めて2時間後には、キーボードはあったほうがいいと思っていました。
―サイズに関しては最初から決まっていたのですか。
花岡サイズに関しても、4型から10型までいろいろ検討しましたが、ハードウェアキーボードの横幅として最低限キープしないといけない大きさを確保することが必須でしたから、それに依存する形、今の横幅になり、それで自動的にサイズが決まりました。
携帯でもスマートフォンでも事情は同じだと思いますが、メールを書いたり、Twitterでつぶやいたりしたくても、文字入力が苦手だという人がたくさんいます。必然的に、どうしてもメッセージが舌足らずになるんです。パソコンのキーボードなら雄弁に入力できるのに、ケータイやスマートフォンでは、いつも通りにメッセージが書き込めないのは大きなストレスにつながります。
ウェブの使い勝手も同じです。携帯専用サイトとPC専用サイトでは情報量に圧倒的な違いがあります。ただ、携帯電話でPC専用サイトを見ても、フルブラウザといいながらストレスがたまります。でも、この製品ならフラッシュも動きます。限られたところで限られた情報を見るのは、携帯専用サイトもありでしょうけど、本物の「フル」というところのニーズは確実にあるはずです。
―コンパクトさを極限まで追求するという狙いはなかったんですね。
花岡キーボードの打ちやすさを犠牲にしては意味がないですからね。でも、フットプリントを少しでも小さくしたいという想いのもとに、操作性を犠牲にせずに、どこまでそぎ落とせるかを真剣に考えました。もちろんコストについても考えなければなりません。最終的には値頃感を優先した結果になりましたね。とにかく買って使ってもらって次のステップを探してもらいたいと思っています。その上で、もっとお金を出して、もっと所有感に富んだ高級端末が欲しいとか思ってもらえればうれしいですね。この製品からのバリエーションは、無限に広がるんじゃないかと考えています。
―オリジナルソフトウェア「ライフノート」はどのようなアプリなのでしょうか。
下井はい、ノートにペンでメモする感覚で使えるアプリケーションです。テキストエディタではありますが、思いついたらすぐに書けることを目指し開発しました。ファイルを開く、保存といった概念もありません。Android では、ウィンドウはシングルですから、その条件下で最大のメリットを得られるように工夫しています。例えば、テキストに区切り線を挿入するだけで、次々に新しいメモが書けます。新しいメモを書いている時も過去に書いたメモを一覧で参照することができます。とにかく、普通のノートを開いて使っているような感じのエディタですね。
メモにカテゴリをつけて分類したり、添付画像は背景のようにみせてテキストを画面いっぱい使って入力できるようにしたりと、いわゆるテキストエディタとはちょっと違った味付けもあります。
また、メモを書いてもらったあとは、そこから先は何をするかを考えました。そして、メールやブログへそのまま送信できる機能につながっています。
―Android のアプリケーション連携機能であるインテントを使えば、どんなアプリケーションにもデータを渡せるんじゃないですか。
花岡もちろんそれも考えました。でも、Androidに慣れないうちは、インテントで受けるアプリが多すぎると、メニューにズラリと表示されて選ぶのが大変です。特に、これはテキスト入力ツールですから、受ける側のアプリも大量にあります。それは大変かもしれないなあと思ったんです。だから、コンセプトとしてデータを渡せるアプリを限定しました。そこは一本筋を通すようにしたかったんですね。